第6位	The North Face Banchee 50
	ザ・ノース・フェイス バンチー50

メーカー

良い点

・わずか1520gの重量はULキャンパー向け
・各コンプレッションストラップは長さに余裕があるので外付けが楽
『ビーバーテールポケット』でフレキシビリティの高い収納性
・2つの大きな『バーティカルポケット』すぐに出したいものはここ
・ベンチレーションが良い
・プルフォワード式ウエストベルト
・チェストストラップにはエマージェンシーホイッスル付き
・とても大きなヒップベルトポケットは両サイドに
・ヒップベルトは背負っていても調整が可能
・ジッパーの引手は大きくグローブをしていてもつかみやすい

悪い点

・軽量化のため各ストラップ類の幅は細め。耐久性は十分とはいえません
・ボトム生地は210Dなので耐久性が少し心配
・ボトムアクセスがない
・トルソー調整が少しやりづらい

耐久性（Durability）

North Face Banchee 50は50ℓクラスのパックにもかかわらず本体重量は1,520gとライトウエイト。それはThe North Face Banchee 50のメインファブリクスは210Dと、他の同じミドルサイズのパックに比べ薄手の生地だから。また全ての生地が210Dジオリップストップナイロンなのも特徴的。

一般的にバックパックはボトムなど強度が必要になる部分は厚手の生地を使い、あまりストレスのかからない部分には薄手の生地を使用するなど、無用に重量を増やさぬよう適材適所な素材が配置されているものです。(例えばクレゴリーバルトロ65はボトムが630D高密度ナイロン、一方で裏地は200Dポリエステルなど)

決して210Dという生地が弱いというわけではないのですが、やはり厚手の素材の方がより安心感があることも間違いありません。

また重量をできるだけ軽くするために各ストラップは、他のパックに比べてより細く薄くなっているのと、バックルも小ぶりなものになっています。

一般的に同じ素材を使った場合、耐久性と重量はトレードオフの関係にあります。必要以上に耐久性を高くした結果重くなってしまったり、耐久性を犠牲にしてまで軽量化するのもギアの扱いに慣れたベテランユーザーを対象としない限り良いとは言えません。その点、このBanchee 50は極端に軽量化されているわけでもなく、重量とのバランスが割と上手くとれているのではないかと思います。

背負い心地（Comfort）

背負い心地のコントロールテストは11Kg、15Kg、16kgと３種類の重量で行いました。もちろん体への負担を考えると重量は軽いにこしたことはないのですが、このパックはショルダーハーネスとヒップベルトのバランスが良く、またストラップの微調整が簡単でスムーズに行えるので重量が15Kg、16Kgと重くなってもパックのベストポジションを素早く・簡単に調整することができ、重量感や疲労感を軽減してくれます。

背面下部のランバーサポートも手触りこそ硬いもののフィット感が予想に反して良かったが驚きで、位置調整可能なウエストベルト(OPTIFITシステム)をほとんど調整なしくとも快適な背負い心地が得られます。

さらに背面のメッシュのベンチレーションもしっかりと通気性が確保されているのもよかった点です。
軽量なパックは総じて背負い心地を多少なりとも犠牲にしていることが少なくないのですが、このバンチー50は驚くほど快適な背負い心地を実現していることに驚きました。

詰め易さ（Packability）

このパックの魅力はなんといってもその収納性の高さ。その中でも特に特徴的であり魅力的な収納の1つがパック正面にある２本のバーティカルポケット。レインウエアや帽子など比較的使用頻度が高くすぐに取り出したいものや、ファーストエイドキットなど使用頻度は高くなくともここぞという時に素早く取り出したいものの収納にまさにぴったり。

これがあるとメインコンパートメントを開ける機会が少なくなるので、雨天時にレインウエアを取り出す際などパック内を濡らさなくて済むことや、収納の際にもいちいちパッキングし直さなくて済むので非常に楽でもあります。またジッパーの引手もつかみやすく、グローブをしていても開け閉めはストレスフリーです。とてもお気に入りの収納の1つ。





もう1つが「ビーバーテイルポケット」と呼ばれるメインコンパートメントとバーティカルポケットの間にある収納。これはサイドコンプレッションベルトと連動して動くので、大きさ・形に関係なく色々なものを収納できます。たとえばヘルメット、アイゼン、テント場で履くためのサンダル・・・などなど、なかなかメインコンパートメントに収納しづらく、また使いたい時にすぐに取り出したいものの収納に特に重宝します。



サイドコンプレッションストラップと連動して動くことで、荷物の多い少ないに関わらずしっかりとコンプレッションしてくれます。とてもフレキシビリティの高い収納です。



ボトムストラップをはじめ各ストラップは長めの設計で、CCフォームマットもボトムはもちろんのこと、サイドコンプレッションストラップにも取り付けが可能なほど。
またパック両サイドのウォータボトルホルダーはストレッチメッシュでホールド性が高く、ボトルを入れた状態で屈んでも滑り落ちてしまうこともありません。


ヒップベルトポケットも両サイドにあり、またしっかりと容量が確保されているのでアウトドア用のやや大きめのデジカメ、行動食、スマホなどを収納するに便利なのも見のがせない点です。





パック自体の容量は50ℓなので3泊を超えるようなテント泊には厳しいのではないかと思いましたが、フレキシビリティの高い収納のおかげもあってか実際４泊のテント泊もこなすことができました。



強いてイマイチだった点をあげるとすると、ベンチレーションを確保すべくアーチ状にされたパック背面は、角ばったものやテントポールのような長いものの収納には苦労することが多いです。またボトムアクセスがないのも人によってはマイナス点になるかもしれません。それでもミドルサイズのパックの中ではダントツの収納性であることは間違いありません。

ユーザビリティ（Ergonomics）

前述したように全体的にポケット類のアクセス性・収納性が非常に高く使いやすいのが特徴なのに加え、各ストラップ類、バックルもストレスフリーな使い心地の良さ。特にジッパーは引手が大きく、グローブをしていても開閉が楽にできるのが良い点です。
唯一、レインカバーが標準で付属されていなかった点が残念というか惜しい点でしょうか。

重量（Weight）

テストしたミドルサイズクラスのパックの平均重量は約1,700gほどなので、1,520gのこのパックはサイズの割に軽量だと言えます。少しでも余分な重量を削減したいハイカーにはアドバンテージになるはずです。

まとめ

軽量で快適な背負い心地、スタイリッシュなカラーとデザイン、また何と言ってもフレキシビリティの高い収納を持つこのパックは、テストしたミドルサイズのパックの中でもダントツの高評価。

特にフロントにある「バーティカルポケット」や「ビーバーテイルポケット」は山行中の天候の変化(雨や気温)や、アクティビティレベルの変化によるウエアの変化にもメインコンパートメントを開けることなく対応できてしまうほど。このユーザビリティの高さは、よりスピーディーでストレスの少ない山行を約束してくれます。

そのほか各ストラップ類が長めなので、比較的大きめのギアの外付けにも困らないのも地味ながら見逃せない点です。

数少ない弱点を挙げるとすると、軽量化のためにやや薄手にされた生地は長期間の使用での耐久性に関しては未知数ではあることと、やはり手荒な扱いは避けたいところです。また強いて言えばボトムアクセスがないことや、レインカバーがないこともやや残念な点でもありました。

それでも収納性をはじめ完成度の高いパックであることも間違いなく、テント泊で2泊〜3泊、場合によっては4泊まで対応可能なほどです。実際このパックで北アルプス奥穂高岳を４泊かけて縦走した時も、何一つ不自由なく過ごすことができました。ミドルサイズの中では間違いなくオススメのパックです。